けむまきがゆく！

まだ出始めたばかりの青い皮のみかんを剥くときの香りが

涼しい風にのって広がるこの時期は決まって小５の運動会を思い出す。


長らく入院していた父が夏の終わりにいよいよ手術することになり

私達子供らは親戚の家に預けられた。

唯一　私が学校生活で活躍できるイベントが運動会。

残念だったが　父はもちろん母も来れない覚悟はできていた。

当日の朝　テントの中で友達とふざけていると母の姿が見えたので

喜んで「お母さん！」と駆け寄った。

すると　突然母が私を抱きしめた。

友人も見ている恥ずかしさもあって離そうとしたが母は離さなかった。

そのまま胸の中にいると　今度はほろほろと生暖かい雫が落ちてきて

見上げると　マイナスの感情は決して見せない母が泣いていた。

子供だった私は　訳もわからず青空に広がる万国旗を眺めていた。


それから4か月後に父が他界した。

少し大きくなってから　父の手術は治る見込みのない手術だったと聞いた。

その運動会の話は　それ以来誰ともしていないが　あの頃の母の年齢に

近づきつつある私は　涙の訳を考えると胸が締めつけられるくらい痛くなる。

あの光景を思い出すと　もう2度と悲しい顔にさせまいと思う。

授業をサボったり嘘ついて外泊したりしたけどね(ﾟ∀ﾟ；)ｱﾊﾊ



後家さんよ　大志を抱け。

老後は私にまかせとけ！